福津市の北側にある「山添」(やまぞえ)という集落に、西浦さん夫妻は暮らしています。山裾にあるこの集落からの眺望は、海岸沿いに広がる田畑と海。この自然と人の営みが作り出す風景に魅かれ、二人は6年前に隣の市から移り住んできました。

健市さんが作った机。オーダーを受けた家具は、健市さんが直接届ける。

 健市さんは、オーダー家具を中心にスプーンや器といった小物も作る家具職人。小百合さんは、糸を紡いで草木で染め、布を織る織物作家。お店の名前は「艸朴舎」(そうぼくしゃ)。「艸」は草の篆書体で、西浦さん夫妻の仕事を表す名前になっています。

小百合さんが庭で摘んだ花が活けられる。

 健市さんは、工房で木の仕事をしつつ、工房の隣にある小さな畑で土仕事。小百合さんは、家事をしつつ、栗やヤシャブシなど、近くにある草木で糸を染めたり、織物教室を開いたりしています。庭にはたくさんの草木が植わり、健市さんが作る花器に小百合さんが花を活けます。
地に足の着いた二人の生活には、地元の方から様々なものが届きます。さつまいもが土から掘り出されたままの状態で玄関先に置いてあったり、「息子が釣ってきたのよ」と、鯛を持ってきてくれたり。お世話になっている方の中には、茶道の先生もおり、「一輪だけいただくね」と庭からお花を摘んでいきます。「私たちがお返しできるのは、花くらいしかなくて」。

器類はメンテナンス方法も丁寧に教えてもらえ、愛着が湧いてくる。

 現在は、工房の隣にある母屋を改修し、店舗兼住居にしています。将来的には自分たちで家を建てることを考えており、いつか山添を離れることもあるかもしれません。自然がいつも同じではないように、これもとても自然なこと。二人が暮らしと仕事を営む場所は、どこだって「艸朴舎」。これからも、二人が見つめる世界への眼差しを近くに感じていたいと思いました。

西浦健市・小百合(にしうらけんいち・さゆり)
毎週日曜日に「艸朴舎」がオープン。健市さんが作る家具や木工品を手に触れることができる。小百合さんは、少人数の織物教室を自宅で開いている。


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