福津市の東側、
代々農家の柴田家。稔さんは、幼い頃から農業を手伝い、勤め始めてからは週末に畑仕事を楽しんでいました。「定年後には専業農家に」。漠然とした未来像は描いていましたが、息子さんの就職を機に退職を決意します。「今までは子どもや家庭のために生きてきた。これからは、自分の為、地域の為に」。稔さんの専業農家への道が始まりました。
富貴子さんは、稔さんの有機野菜の長年のファンの一人。「形は不格好でも、味はバッチリ」。本物の味を伝えたいと、調理師専門学校に一年間通い、料理の基礎と食の大切さを学びました。「充実した一年で楽しかった。一手間、二手間かけることによって料理のおいしさが全然違ってくる」と富貴子さん。「妻の料理が丁寧になった」と稔さん。早朝4時半から厨房で調理を始める富貴子さんに代わり、朝食を担当。「穴ができたら、埋めるしかないやろう」。ぶっきらぼうな言葉遣いですが、しっかり愛妻家を感じます。
「八並ならではの農業や自然と共にある暮らしを子どもたちに残していかないかん」。許斐山に育まれた豊かな自然を活かした、八並ならではの丁寧な農業がかつてはあったと稔さんは言います。熟練農家からそんな農業を学び、いずれ六次産業化していくことを考えているそうです。
還暦に近づく二人ですが、夢は広がる一方で、向上心と向学心に満ち溢れています。「夢を持って、死ぬまで働きたい」。さらっと言ってしまう稔さんを見て、年を重ねていくことにわくわくしてきました。
柴田稔・富貴子(しばた みのる・ときこ))
農園このみの里、このみの里おかず屋を経営。生産された野菜や調理された総菜は、福津市内の直売所「ふれあい広場ふくま」や「わいわいファーム」にて販売。買い物弱者を支援するため、宗像農協神興支店駐車場にて青空市場を開いている。(毎週日曜日、午前8時~9時)