「今日は夕陽がきれいそうやね」。眼下にまちと海が広がる高台に暮らす中島美香さん。二人の娘さんは元気に走り回り、旦那さんは、庭の手入れや小屋作りに精を出します。「福津って本当にいいまち」。中島さんからつぶやくように言葉がこぼれ落ちました。

中島さんは4年前に筑紫野市から移住。夫婦共にダイビングが趣味で、海沿いのまちに新居を求めました。現在の家が建つ地を訪れた時、海に沈みゆく夕陽が目の前に広がります。「ここに住もう」。中島さん夫婦の心は固まりました。

 

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中島さん宅から見える夕陽

 

自宅の棟上げの時、餅まきを開催。その時、友人に誘われて訪ねてきたのが浅尾真紀子さんでした。二人は、これからやっていきたいこと等を語り合い、意気投合。おもいを形にしようと、味噌作り教室を開きました。すると、参加者から「また何かしないんですか」と問いかけが。「次」など考えず、突っ走った二人でしたが、「じゃあ、来月にもう一度」と、二度目の味噌作り教室を開催。それから月に一度ワークショップを開くようになりました。会の名前は、「おうちごはんplus」。お母さんたちが健康で心豊かな子育てや親育てができるように、食を中心としたワークショップを開いています。

 

おうちごはん

「おうちごはんplus」主催のおやつ教室

 

現在は伝える側に立つ中島さんですが、かつては異なりました。一人目の娘さんを妊娠した時、助産院での出産を決め、通院。その助産院では食事内容を厳しく指導しており、中島さんも「ごはん食で魚を食べるように」と指導を受けました。食べるものが、自分を、赤ちゃんをつくっていく。中島さんは、食生活を見直すようになりました。同じ頃、「ホールフード」(※)という考え方に出合います。「今までやってきたことが全部繋がるようで」。農学部を卒業し、環境教育の仕事にも従事していた中島さん。「ホールフード」という考え方は、今までのことを一つに結び、これからやっていきたいことを形にしているものでした。

 

ホールフード

津屋崎で行われた「ホールフード交流会」の様子。

 

4年間かけてホールフードのインストラクターの資格を取得し、薬膳料理や整理収納のことも学ぶ中島さん。近い将来、お母さんも子どもも学び楽しめる場所を開く予定です。「自分が楽しむことを忘れず、やっていけたら」。中島さんの中に灯る光は、お母さんたちの毎日を優しく照らし、家族みんなが健康で笑顔でいられるようにと導いています。

※ホールフード
ホールフードとは、もともと皮も根っこもまるごと食べる「全体食」から生まれた言葉。そこから発展し、食べ物を「まるごと」食べるだけではなく、食を通じて暮らし・農業・環境まで「まるごと」考えていこうという新しい価値観のこと。

中島美香さん

関西出身の二児の母。幼い頃からものを作ることが好きで、一年前から陶芸教室に通い、娘さんたちが使いやすい器を研究しながら作っている。


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