海岸から東側に車を15分程走らせると、風景が一変し、目に緑がたくさん映り始めます。県道から一本山手に入ると、旧唐津街道畦町宿があり、そこに「ぎゃらりぃ畦」という毎週土日に開くお店があります。

「ぎゃらりぃ畦」の外観。築80年以上の古民家の趣きと現代的なものが融合している。

 ぎゃらりぃを営むのは、岩熊さん親子。奥さんの美穂子さんは、トンボ玉を作り器を焼く、ご主人の寛さんは、畑で無農薬の野菜や果物を作る。娘さんの陽子さんは、その野菜や果物を使ってお菓子を焼きジャムを作ります。ぎゃらりぃは、寛さんの生家でもあるからか、おばあちゃんの家に居るような安心感を覚えます。

お店の中には器、トンボ玉、お菓子等が並び、月替わりで作家の展示も行われる。

岩熊寛さんの短歌。お店の一角に飾られている。

 寛さんはお店と並行して、畦町の町起こし活動にも熱心に取り組んでいます。というのも、故郷である畦町に恩返しをしたいという思いをかつてから抱いていたからです。「唐津街道畦町宿の街並みを保存する会」を地元の方と共に発足させ、お祇園様の池復元・畦町宿散策マップ作り・空き家活用・道筋の草刈等を会員の方と共に行っています。「お年寄りや子供たちの笑顔を頂くのが何より嬉しい」と言いつつ畦町をより良い形で残していく活動を行っています。

 「6年前にお店を始め、いろんなお客様と出逢い、交流を持てるようになった。こんな田舎だけれど他にお店も少しずつ増えて来て、町に活気が出てきている」。生まれ育った家で家族と共に始めたお店。畦町の地元の方の協力や家族の力、そして寛さんの「故郷を愛する」気持ちが形となり、じわじわと町が脚光を浴び始めています。「私の人生、リタイヤしてからの思わぬ展開」と語る寛さんですが、頭の中には「次の計画」も一杯。畦町の未来はまだまだ広がりそうです。

岩熊寛 (いわくま ひろし)
古賀市在中。6年前に「ぎゃらりぃ畦」を親子三人で始める。野菜作り、短歌、川柳、郷土史の研究、福津市「郷育」講師、「景観づくり」委員と趣味や活動の幅は広く、リタイヤ後の生活を楽しんでいる。


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