季節の花々が咲き、ほのかにハーブの香りがする庭。スカートをひらひらさせて踊りたくなるようなこの庭は、福間海岸近くにアトリエを構える【TORII絵画造形教室】です。教室を主催するのは、鳥井正夫さん、啓子さんご夫婦。画家である二人は、自宅の敷地内で絵画教室を開き、絵や造形を教えています。
二人は共に福岡市内で育ち、結婚後も暮らしていました。しかし、開発が進み、子育てと作品作りの環境を考えて引っ越すことに。引っ越し先は、海と山がある場所を望み、直感を信じて福津市に決めました。25年前のことです。
福津は、啓子さんの親戚が住む地ではありましたが、二人にとってはゼロからのスタート。絵画教室を開き、目の前にいる生徒に誠実に接することをコツコツと続けました。歯を食いしばる時期もありましたが、二人は、その時その時を楽しみました。恵まれた自然環境がある地で暮らし、好きなことを仕事にし、人に喜んでもらえていることの有難さを忘れずにいたのです。
子育ては、二人を成長させるものでした。双子の次女と三女が生まれた時、双子だったこともあり、正夫さんは仕事以外の時間を子育てに当てました。「ジョンレノンだってそうしたんだ!しばらく作品作りは休止」。しかし、子どもの寝顔や食事をしている姿を見ていると、手を動かさずにはいられなくなったそうです。「子育ても目一杯させてもらえたので学べた」。正夫さんは言います。
啓子さんにとっても子育ては、転機をもたらすものでした。幼少期の自然の中での体験が啓子さんの基盤となっており、娘さん達と一緒に福津の自然の中で過ごすことで、その体験を思い出したのです。自身の原点を再認識でき、その後の作品作りに大きく影響しました。
二人は結婚した時、陶器の家を一緒に作り、これから築く家庭についてたくさん話をしました。「家庭を何よりも大事にしよう。家庭がうまくいってこそ仕事を行う意味がある」。二人は玄関にその陶器の家を置き、言葉の通りの家庭を築いています。
生活の中に好きなことも仕事もあり、その時々を家族と共に楽しむ鳥井さん家族。家族がいるからこそ成長でき、各々の人生の可能性が広がっていくことを改めて感じました。
鳥井正夫さん 啓子さん
<正夫さん>幼い頃から一人で絵を描いて過ごす。小中学校時に描いた絵がコンクールで賞を取るようになり、絵の道へと進み、生涯の仕事となる。
<啓子さん>幼少期から野山に親しんでおり、小学校の時に絵画教室に通う。大学で小田部泰久先生と出逢い、絵の道へと導かれる。