福津市の東側に「光陽台」という住宅街があります。その中の一軒で野田壮平さんは生まれ育ちました。野田さんは、福津市内を拠点に活動するカメラマン。大学進学と共に実家を離れ、東京での就職を経た10年後、28歳の時に実家に帰ってきました。

まちの中の作業風景を撮影する野田さん。

10年の月日の中で、彼自身も変化しましたが、同じようにまちも様変わりしていました。小学校の通学路に広がっていた田園風景は、住宅地へと姿を変え、自宅の近所の子どもの姿もなくなっていました。その変化に直面した時、寂しさを覚えましたが、次第にその感情は「仕方のないこと」として野田さんの中で消化されていきました。というのも、彼自身が育った住宅街も山を切り崩して造り上げられたものだからです。直面した変化を否定することは、自身が育った場所も否定することになります。

「どう変わるかわからないからこそ、今を知っておくことが大事かなと思う。知らなかった身近なことを知り、覚えておきたい」。野田さんは、現状のままを残すことに執着し過ぎず、変化することを前提に、今、身近にあることをつぶさに見つめ、心身に記憶しています。

野田さん自身の生き方そのものが、まるで写真を撮るようで、彼が映す「今」をこれからも見つめていきたいと思いました。

野田壮平 (のだ そうへい)
カメラマン、福津市の臨時職員。大学時代に写真を専門的に学び、スタジオ勤務を経てフリーに。福津市に帰ってきてからは、海岸沿いの松林を作品として撮り続けている。。


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